Hair cuts

過去に何度か浩人に女を寝取られたことがある。

そう言えばすごく聞こえが悪いけれど、事実だから仕方ない。

浩人は昔からよくもてた。俺が好きになった子はだいたい浩人に惚れたし、浩人にお近づきになりたくて俺と仲良くする女の子もいた。

俺たちはよく似ていると言われるけれど、似ているのは背格好だけで、顔は全然似ていない。浩人は目鼻立ちがはっきりとしていて、そこいらの芸能人やモデルなんかよりずっとハンサムだ。それに引き換え俺は、奥二重の目が眠そうで、いい人という印象を与えるらしいが、決してイケメンではない。俗に言う癒し系。

でも、女は癒しより刺激を求める生き物だ。凡人より奇人を、安定より波乱を、そよ風より嵐に心を掻き立てられる。つまり、優しい男より、時々優しい、自分を泣かせる男に弱い。

浩人は、まさにそういうやつだ。

やっかいなのは、浩人が俺の好きな女の子と寝たことを隠そうとしなかったことだ。

「わりぃ、○○とやっちまった」少しも悪びれず報告するから、そのたびに俺は気丈なフリをしなければいけなかった。俺にもプライドがあるから。もちろん、ショックだった。けど俺は、「まったく浩人だもんな」と笑っていた。

情けない。心の中では血の涙を流してるくせにさ。

でも、そうするしかないじゃないか。結局選ぶのは女の子なわけだし。