Hair cuts
その翌日、浩人は顔中あざだらけにして登校した。聞けば、あの先輩の彼女とやってしまったらしい。それがばれ、袋叩きにあったのだとか。

「なんでそんなことしたんだよ!」

「だって、そういう雰囲気になっちまったんだから仕方ないだろう。それにちょっとタイプだったし」

浩人は言った。なんだか聞き覚えのあるそのセリフ。なぁんだ。そういうことか。

それで、結局俺は浩人のことを許してしまった。つまり、浩人はそういう雰囲気になったらやっちゃう男なのだ。しかもそれがちょっとタイプだったら理性がきかなくなる。それだけのことだ。

ずっと俺はこんな風に思っていた。もしかしたら、浩人は俺のことを見下してるんじゃないかって。だから、俺の好きな女の子にわざとちょっかいを出すんじゃないかって。

でも違った。浩人は心と下半身が別々の感情を持つ、男子中の男子だったんだ。そういう結論に至った途端、俺は込み上げてくる笑いを我慢する事ができなかった。

「何、笑ってんだよ」

「別に。いいざまぁだなと思ってさ」

一瞬、浩人はむっとした表情になったけど、反論はしてこなかった。まあ、できねぇよなぁ。

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