Hair cuts
家に着くと予定外のことが起こった。とっくに出かけているはずの親父がいたのだ。

うわ、最悪。けど、今さらやっぱり今日はどこかへ行こうというのもどうかと思い、仕方なくさくらを家にあげた。俺の部屋に行くためにはリビングを通らなくちゃいけないが、さっと二階へ行ってしまえば問題ないだろう。

でも、そう簡単にはいかなかった。リビングで父親と鉢合わせたさくらは、少し驚いたような顔をしたが、丁寧に挨拶をした。

「はじめまして、こんにちは。遊里君のクラスメートの赤坂さくらです」

俺が女の子を連れてくるなんて初めてだったから、親父はちょっと焦って、「あ、いや、これはこれは…」なんて恐縮していたけど、すぐにさくらを値踏みするような目つきになった。

「まさか遊里にこんな綺麗なお友達がいるとは驚いたよ。君、遊里と同い年なのかい?」

「はい、そうです」

「ほう。家はどの辺りなのかな?」

「A町に住んでいます」

「そりゃ、遠いところからすみませんねぇ」

もうやめてくれ。何気ない会話をしながら、さくらの素性を探り始める親父にまじで腹が立ったけれど、ここで親子喧嘩するわけにもいかず、俺は会話を切り上げるタイミングを見計らっていた。
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