Hair cuts

俺の心配とは裏腹に、さくらはそつなく親父の相手をしてくれた。聞かれたことにきちんと答え、つまらない冗談にも笑い、嫌な顔も見せない。

しっかりしてるんだな。

親父はそんなさくらのことをなかなか気にいったようで、顔が綻んでいた。特に、さくらの父親が役場職員で母親が美容師、そのうえ結構手広く田畑もやっている知ると、ますます機嫌が良くなった。

「そうか、お母さんが美容師さんだから自分も美容師に。いやあ、いいことだよ。これからは女の人も働かなくちゃいけない時代だ。手に職を持つという選択は間違ってないよ。結婚後も出産後も続けられるしね」

親父の機嫌はもはやピーク。俺に、美容師なんかで今の時代食っていけるわけがないと罵倒したのは誰だっけ？

「ところでさくらさんはどこの高校を出ているんだ？いや、実はわたし、高校の社会科の教師でしてね…」

「親父、もうういいだろ」

さすがに止めに入った俺を制して、さくらが出身校を告げると、親父は大満足し、ようやく開放してくれた。

間違いなく、親父のお目にかなったようだ。