Hair cuts
ようやく二人の体が離れたときには、すでに日が暮れていた。

「私たち、今日が本当の交際記念日だね」

俺の腕の中でそっと目を閉じたさくらの髪の毛を梳きながら、こいつだけは浩人に取られたくねぇ。取られてたまるかと思った。俺の荒ぶる胸の内など知るよしもなく、さくらは静かに微笑みながら俺を見上げた。また愛おしさが溢れた。汗ばんださくらの額にそと口付けした。その刹那、どーんという轟音が鳴り響き、カーテンの向こう側がぱっと輝いた。

「花火…」

カーテンを開けると、夜空に、大輪の花が咲いていた。

「花火大会があったんだね」

「そうみたいだな」

「夏が終わっちゃう。あっという間」

弱々しいく湿った声でさくらがつぶやいた。

「来年は、一緒に行こうな」

俺の言葉に、さくらは唇の端を少しだけ上げて笑った。

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