Hair cuts

浩人十八歳・秋

黄金色の頭を垂れた稲がまるで波のようにうねって揺れていた。それで、次は髪の毛を黄色に染めようと、ふと思い立った。夏に染めた灰色はすぐに色落ちし、白金と黒のツートンで、まじかっこわりぃ。

窓から入る風はぱりっと乾いていて、空は澄んだ水色で、そこにトンボの群れが点々と可笑しな模様を描いている。そういや秋だっけ。遊里の運転する俺の車の助手席で、愛華からの返信を待っている時に見た今朝の景色。いつもの通学路。

新学期が始まってから、遊里とさくらの距離がぐっと近くなった。ああ、こいつらとうとうやったな。そう思って訊ねたら、「お前らには負けるけど」なんて。まあ、そりゃそうだけど。その後、「愛華のこと、もう少し大事にしてやよ」なんて説教垂れる遊里にちょっとむかついたのは言うまでもない。「言われなくて大事にしてるつっぅの。俺が愛華以外の女とやったからって、愛華のことを大事にしていないわけじゃないべ」そう反論すると遊里は何か言いたそうに口を開いたが、結局何も言わなかった。

なんだよ。言いたいことがあるならはっきり言えばいいのに。こいつはいつだってそうだ。きっと、俺に何か言っても無駄だと思ってるんだろう。そしてそれは間違いじゃない。俺は誰かに指図されるのが大嫌いだ。バカだけどバカにされるのは嫌だし、かといって諭されるのもむかつく。俺に命令してもいいのはこの世でただ一人。親父だけなのだ。
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