Hair cuts
「なに、この汚い作品」

ロッドががたがたで目も当てられないほどの俺の作品に久美ちゃん先生が呆れている。

「少しは彼女を見習え」

そう言って、愛華の作品をひょいと抱えた。

「はい、みんな集合」

久美ちゃん先生のかけ声で、クラスのやつが俺の机の周りにわらわらと寄ってくる。久美ちゃん先生は二体のウィッグを並べて愛華の作品の良いところ、直したほうがいいところ、真似るべき点などを、生徒を集めて説明していく。哀れ、悪い例として取り上げられた俺のウィッグちゃんはみんなの笑いものだ。

ごめんよ、キャサリン。

キャサリンというのは俺がマイウィッグに名づけた名前だ。

「ああ、さらし者にされて、恐かったろ。俺がふがいないばっかりにごめんよキャサリン」

久美ちゃん先生の指導が終わって、みんなが散り散りになり作業に取り掛かる寸前のタイミングを見計らい、俺はキャサリンを抱きしめた。思惑通り、クラスは爆笑の渦。久美ちゃん先生は「どうしようもないやつ」という風におでこに手を当てている。

「もう、やめなさいよ」

愛華がおれを肘でつついて顔を赤くしている。遊里とさくらが二人だけでそっと笑い合うのを俺は見逃さなかった。

へぇ。アイコンタクトできるほど仲が深まったんですか。そいつぁよかたですね。それにしても、あいつら、いつやってんだろう?
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