Hair cuts
「なぁに笑ってんだ」

ぱしっと乾いた音がして、頬が焼けるように熱くなるのと同時に、俺の体は横にふっとんだ。がらがらっと音がして全身に鈍い痛みが走る。親父の飲んだ酒の空き缶がぎっしりつまったゴミ袋の上に俺は倒れていた。

痛みで朦朧とする頭で、親父飲みすぎだろとか、俺も柔道やっとくんだったとか、的外れなことを考える。そうしなくちゃ、この悪夢のような時間を乗り切ることができないということを俺はとっくに学んでいた。

その間にも、親父の足蹴りや罵倒の嵐は続く。俺はでかい体をなるべく小さく畳んで、親父の攻撃に耐える。そして意識を別のことに集中させる。

授業の内容。パーマネントウェーブの1剤は還元剤で2剤は酸化剤。薬品の名前は長すぎて覚えられん。

久美ちゃん先生のこと。最近ちょっと太ったんじゃね?つったら、本気で傷ついた顔してまじ焦った。

遊里とさくらのこと。あいつらはいつやってるんだろう。

愛華や他の女とのセックス。超きもちいい。

前に遊里の女とやったとき、遊里は初めて俺を殴ろうとした。あん時の遊里の顔は傑作だった。

親父の気はまだすまない。

けど、体はだんだんと痛みになれて、感覚が無くなっていく。親父の心の感覚もこんな風に鈍くなって、いつか痛みを感じなる日がくるんだろうか?
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