Hair cuts
あたしは浩人の全てを受け止め、浩人だけを愛する。あたしの全てを浩人にあげる。浩人が他の女の人を求めても、あたしは、浩人以外の男の人は求めない。あたしは浩人の一番の理解者だから。

ただ、多くを求めない分だけ、深い繋がりが欲しい。心の奥の奥の、そのまた奥底でぎゅっと結びついた強い絆。それは、一生結びついてほどけなくて、私を強くさせてくれるに違いない。

恋人でも友人でも。たくさんのボーイフレンドより最愛の人。多くの友人より唯一の親友。

小さい頃から人付き合いが下手だった。初めはうまくいくのに、こちらが仲良くしようとすればするほど、みんな離れていった。うざい。空気よめない。しつこい。そう言って、みんないなくなる。男の子だって、そう。初めはちやほやしてくれるのに、いつの間にか冷たくなる。お前重いんだよ、って。

今、あたしはその両方を手に入れた。最愛の人と親友。浩人とさくら。

入学式のとき、あたしは自分からさくらに声をかけた。さくらが一番誠実そうに見えたから。思ったとおり、さくらは良い子だった。優しくて、賢くて、屈託がなくて。

けど、時々、ほんの時々だけれど、その屈託のなさが憎いと思う。後で知ったことだけれど、さくらは育ちもいいし通っていた高校はお嬢様学校だった。さくらがあんなにも優しいのは、満たされているからなんだろう。
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