本当の俺を愛してくれないか?
初めて見る彼女の姿に、俺の視線はくぎ付けになる。


「ほら!ちゃんと飲んれください!」


ビールの入ったコップを無理矢理渡され、たっぷり入っていたビールは、無惨にも俺のスーツにこぼれ落ちる。


「あっ、ありがとう...」


きっと好意でしてくれたことだろう。そう思い、お礼を延べ酌してもらったビールを口に含む。

...それに。


満足そうに俺がビールを飲んでいる姿を見つめる小林さんを、ちらって見る。

だいぶ酔ってる、しな。


「あー、もう!部長は本当に凄いれすねぇ」


「...えっ?」


なんだ?突然に。


「私は、部長がうらやましいんれすよ!...仕事がれきて、かっこよくて。...私らんてお菓子大好きなのに、全然企画通らないし...。私、辛いれす」


そう言うと、いきなり泣き出す。


「ちょっ...小林さん?」


近くにあった未使用のおしぼりを開け、差し出す。
それに気付いた小林さんは、受け取り涙を拭う。

気付かなかったな。
小林さんはいつ見ても明るくて。そんなこと気にしていたなんて。


「...あのさ、小林さん」


「はい?」


落ち着いたのか、俺を見つめてくる。
小林さんの目はまだ赤くて。


「立場上、みんなから上がってくる企画書に目を通しているけど、小林さんの企画、俺は好きだよ」


「えっ...?」


「いつも可愛いデザインのお菓子を提案してくるだろ?確かに企画は通らないけど、でも俺はいいと思うよ」


「部長...」


部下からあがってくる企画書は、みんなそれぞれの個性が出ていて。

出来るものなら、みんなの企画をあげてやりたいけど、それが出来ないのが会社なわけで。


「だからさ、これからも根気よく企画を出してきてよ。頑張ればきっとそれは報われるから」


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