本当の俺を愛してくれないか?
入社して半年。開発部に配属されて三ヶ月。徐々に仕事も覚えてきて、責任ある仕事を任されるようになって。

そして、もっと最上部長を好きになった。


「あんなに格好いいのに仕事も出来るし、ひいきとかしないでみんなに平等に接してくれるし。好きにならない方が難しいよ」


「でも、美人な彼女がいるって噂だよ?」


「...分かってるよ」


そう。咲花の言う通り、最上部長には美人の彼女がいるって専らの噂なわけで。


「しかもスーパーで仲良く買い物してるところを見たらしいじゃない?部長、いつも美味しそうな手作り弁当持ってきているし、同棲もしている可能性大!だね」


サンドイッチを頬張りながら得意気に話す咲花。


「もー!だから分かってるってば!...別にいいでしょ?勝手に好きでいることくらい」


最上部長は七歳年上で大人の男性で。
きっと最上部長から見たら私なんてきっと、てんで子供で。
あんな素敵な人に彼女がいないわけないと思っていたし、いなかったとしても私なんかが相手にされるわけないって充分理解している。

だから開き直っている。
勝手に好きでいるだけだからって。

だって会社に好きな人がいたら、会社に来る楽しみも増すし。やる気も違うし?


「最上部長は私の目の保養なのー」


そう。見ているだけでいいの。


「もー。宏美はまたそんなこと言ってる。部長なんて無理なんだから、さっさと諦めて彼氏作りなさいよ」


「またそれ?...私別に彼氏欲しくないし」


咲花とは同期入社で、同じ部署で。
同じ環境の中にいることもあって、次第にプライベートも共にするようになって。いつの間にか仲良くなっていた。


「あら。宏美は欲しくないじゃなくて、欲しくても出来ないんでしょ?」


「...ちっ、違うから!」


「別に私にまで嘘つくことないでしょ?宏美の酒癖の悪さはよーく知っているんだから」


「うっ...!」


この歳になると、なかなか新しい出会いなんて待っているだけじゃ訪れることはなくて。
合コンや飲み会に正直、出会いを求めちゃうわけで。
だけど大学時代から連敗に終わっている。それと言うのも...。


「宏美さ、いい加減お酒辞めなさいよね」


「分かっているよ!...だけどそれが出来ないから困っているんじゃない」


二十歳を迎えたのをきっかけに飲み始めたアルコールは、想像以上に美味しくて。


「第一みんなが目の前で呑んでいるっていうのに、私だけ呑めないなんて地獄じゃない」


「飲み会のたびに家まで送り届けなくちゃいけない私の苦労も分かってほしいんだけど」
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