本当の俺を愛してくれないか?

あれ...?
って言うかそもそも家に目覚まし時計なんてものは、なかったような...。

夢心地だった頭が段々と覚醒してきて、そして目が開く。


まず最初に目に飛び込んできたのは、いつもとは違うかけ布団のカバー。


えっと...。ちょっと待って。
恐る恐る布団をめくり部屋を見回すと、間違いなく私の部屋ではなくて。


「...もしかして、やっちゃった?」


少女漫画やドラマによくあるような展開?

バッと自分の姿を見ると、服は昨日のまま。ホッと胸を撫で下ろすも聞こえてくる目覚まし時計の音。
それはドアの向こう側からで。


「とっ、とにかく落ち着こう!」


ここは間違いなく自分の部屋じゃなくて。ましてや咲花や友達の家でもない。

昨日は会社の飲み会で。最上部長のヒット祝いで凄く飲んじゃって。...飲んじゃって、私...どうなったんだろう。
いつもだったら、ちゃんと咲花が家まで送り届けてくれるんだけどな。
だから毎回安心して呑んじゃうんだけど...。


そんな時、目覚まし時計の音は止まって。ドアの向こう側からは物音が聞こえてくる。
きっと家の主が起きたに違いない。


どっ、どうしよう。
いや、とりあえず向こうに行って謝るべきだよね。大迷惑を掛けちゃったわけだし。


「...よし!」


酔っぱらいの女になにもせずに泊めてくれたんだから、いい人に決まっている!

そう自分に言い聞かせてベッドから起き上がる。
そしてゆっくりとドアの方へと向かっていく。
私の心臓はびっくりするくらいばくばく言っていて。緊張は半端なくて。

それでもどうにかドアの前に辿り着き、ドアノブに手を掛ける。


...ん?でも待って。
昨日会社の飲み会だったんだから、もしかしたら同じ会社の人かもしれない。よく考えたら知らない女を泊める人もいないだろうし。

そう思うと、さっきまであんなに緊張していたのに落ち着いてきて。

そうだよ。きっと会社の人だよ!
だったらこんな緊張することないじゃない。私の酒癖の悪さなんて殆どの同僚が知っているんだから。


そう思いながら、ゆっくりとドアノブを引く。


「あの...すみませーん...」


それでも声が小さくなっちゃうのは、小心者な証拠。
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