本当の俺を愛してくれないか?
小森さんって実はちょっぴり苦手だったりする。
大卒で出世街道まっしぐらで。そして仕事も出来て明るくて面倒見もいい。

だから自然と小森さんの周りにはいつも人が集まってくるし、女子にも人気。


最上部長ほどではないけど、俗に言うイケメンだし?

でも小森さんって遊んでいそうっていうか、チャラそうで嫌。


私の一番嫌いなタイプの男性なんだもん。


そんな人と私は今、会社へと向かっている。


「小林さんって意外と歩くの早いんだね」


「そうですか?」


そりゃそうよ。普段より早くなるに決まっています。


「ねぇねぇ。金曜の夜はどうだったの?最上部長と何かあったりした?」


「...えっ?」


小森さんのその言葉にさっきまであんなに早かった足が一気に減速していく。


「みんな気になっていたんだよ?小林さん、酔ってて最上部長から離れなかったからさ。もしかしたら今頃...みたいな?」


みたいな?って...。

まるで女子のように話す小森さんに私の嫌い度数はますます急上昇していく。


「残念ですが小森さんの期待しているようなことは何一つありませんよ?第一あるわけないじゃないですか」


そうよ。
私と最上部長のあいだに間違いなんて起こるわけがない。
起こったと言えば、私が醜態をさらけ出してしまったくらいよ。


「それに最上部長は大人の男性ですから」


『あなたとは違うんですよ?』って付け加えたいくらいよ。


「ちぇー。やっぱり何もなかったのかぁ」


「当たり前です」


...ん?やっぱり?


「まっ、最上部長は彼女一筋だからな。間違いさえ起こるわけないか」


『彼女一筋』ずっと分かりきっていたことだけど、そんな言葉を聞くたびにやっぱり私の胸は痛んでしまう。


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