本当の俺を愛してくれないか?
早く会社に着かないかな。
そんな気持ちで一杯。小森さん苦手だし、最上部長の話するし。


だけどなかなか会社が視界に入ってこない。

そんな時、


「でもさ、小林さんは最上部長に惚れてるんでしょ?」


「...は?」


今なんて言った?


さっきまでオフィスに向かう人の波に流されていたって言うのに私の足は止まってしまった。


「あれ?小林さん?」


隣から消えた私に気づいた小森さんの足も自然と止まり、振り返り私を見る。


「えっ?普通にそうでしょ?だって酔って抱き着くくらいだし?小林さんさ、今までの飲み会でいくら酔ってても男に抱き着くなんてことなかったじゃない?だから好きなんだろうなって思ったんだけど、違った?」


早く脈打つ心臓。すぐに否定したいのになかなか言葉が出てこない。
だって今まで誰にもバレたことなかったし、知っているのは咲花だけだったから。


「...黙っているってことはやっぱ図星?ならやめた方がいいと思うけどね。最上部長なんか!」


最上部長なんか?



「それってどういう意味でですか?」


彼女がいるから?それとも違う理由?


「だってそうだろ?つまんない男じゃん。仕事出来るし顔もいいのにずっと一人の女に縛られててさ。土曜日、たまたま会社で会った時、話聞いて正直引いた。女にとったら重すぎだと思わない?」


そう言いながら最上部長をまるでバカにするように鼻で笑う小森さんに一気に怒りがこみ上げてきて。

気付いたら私は人混みの中だと言うのに小森さんの頬を平手打ちしていた。


「最低なのは小森さんじゃないんですか?人の陰口や噂ばかり言う男の方が引きます。...誰もがみんな小森さんみたいな最低な男が好きだと思い込まない方がいいですよ?」


よほど驚いたのか放心状態のまま私を見つめる小森さん。


「失礼します」


一礼してまた人の波に流されていく。
小森さんを残したまま。



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