本当の俺を愛してくれないか?
「...どうしよう。全く読めない」


昔から人の表情やちょっとした変化に敏感な方で、他人の行動を観察したりするのが好きだった。
だからある程度人を見る目には自信がある。
でも、小森さんだけはダメ。
正直何を考えているか分からない。殴られた相手にあんな笑顔見せるなんて...。

もしかして私が殴ったせいで頭のネジが一本外れておかしくなってしまったんだろうか。

いやいや!そんな漫画じゃないんだから!


「小林さーん。なんか忙しそうなところ申し訳ないけど、これお願いしてもいい?」


「えっ!あっ、はい!」


先輩から慌てて書類を受け取り、ふと時計を見るととっくに就業開始時刻を過ぎていた。


やばっ!


慌ててパソコンを起動させ、仕事に取り掛かった。


ーーーーーーー

ーーーー


「小林さん!どこに行こうか」


「えっ!?」


お昼休みに入るとほぼ同時に私のデスクへと笑顔で駆け寄ってきた小森さん。

意外な光景に一気に注目される。


「俺、美味しいパスタの店知っているんだけどそこどうかな?」


どうかなって...。一体何を考えているの?それより小森さんはこの痛すぎる視線に気付いていないわけ?


「あっ、そこ混むんだ!早く行こう!」


「えっ!ちょっ!?小森さん!?」


私の話など一切聞かず急に私の腕を掴み歩き出した小森さん。


「絶対小林さんもあそこのパスタ、気に入ると思うんだ」


いやいやいや。気に入る、気に入らないの問題じゃないんですけど!

みんな唖然と私と小森さんを見ていて。
そしてその中には、咲花の姿も。

あぁ。咲花ってば驚きすぎておかしな顔になってる。

...咲花。無事に戻ってこられたらちゃんと事情を話すからね。


小森さんに引きずられるようにしながら、オフィスを出た。
< 33 / 86 >

この作品をシェア

pagetop