本当の俺を愛してくれないか?
「いいえ!そんな彼氏なんているわけないじゃないですか!」


学生じゃないのに『彼氏』という単語にこんなにも敏感に反応してしまうのは、私がまだまだ子供だからだろうか。

でも慌てる理由は十分にある。だって聞かれている相手が女友達とかじゃなくて小森さんなんだから。


「そっか。...ならよかった」


...ん?よかった?


「あの...」


さっきから小森さんはなに言っているの?


すると照れたように頬を赤らめる小森さん。


ちょっと待って。嫌な予感がしちゃうのは私だけ?


「俺...。あんな風に女の人に叱られたことなんてなくてさ。新鮮だったっていうか、普段のギャップにやられたって言うかさ...。もっと小林さんのこと、知りたいって思うんだ」


やっ、やっぱりー!!


いやいやいや!
殴って気に入られるなんて聞いたことないんですけど!!


「そう思うと小林さんが可愛くて仕方なくてさ」


そう言われたって...。
絶対今の私の顔、引きつっているに違いない。


普通の女子だったら、小森さんにこんなこと言われたら嬉しくて堪らないのかもしれない。
だけど私は絶対に無理。小森さんを恋愛対象に見ることなんて出来ないし、悪いけどタイプじゃない。


「...小林さん?」


きっとただ単に私みたいなタイプが珍しいだけ。
そうに決まっている。
それに変な期待を持たれてもかなり困る!!


「すみません、私は小森さんには全く興味がないので!...ただ、今朝のことは反省してます。すみませんでした」


さっさとこの場を立ち去ろうと、急いで残りのパスタを口に入れる。そして

「ご馳走さまでした。あの、これお会計だけお願いします」


呆気に取られている小森さんを残し、お金を置いて席を立つ。







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