本当の俺を愛してくれないか？

咲花の言う通り、最上部長以外の人を好きになれたらどんなにいいだろう。


学生時代は失恋したらちゃんと忘れられて、また次の恋にいけていたんだけどな。

なんで最上部長だけはそういけないんだろう。


「ごめん宏美、私帰らなくちゃ」


「えっ？」


戻ってくるなり帰る支度をする咲花。


「親からでさ、お兄ちゃんが久し振りに帰ってきたからあんたも来なさいってしつこくて」


「そっか。そりゃ帰らないとだね」


「本当にごめんね。宏美はどうする？」


どうしようかな。一人になっちゃうけどまだ家には帰りたくないな。


「料理もまだ残ってるし、もう少し飲みたいからまだいるね」


「そう？じゃああまり飲みすぎないようにね」


「うん」


「お金ここ置いておくから、足りなかったら月曜日に言って。またね」


「気を付けてね」


お金をテーブルに置くと咲花は足早に帰って行った。


ちょっと寂しいけど、たまには一人で飲むのもいいのかもしれない。


それならもうとことん一人で飲んでやろう！
変に意欲が湧いてきて追加注文しようとメニュー表に手を伸ばしたその時、聞こえてきた聞き覚えのある名前。そして声。


「おーう。わりぃな、翔太！」


「全く。久し振りに連絡してきたと思ったら...」