本当の俺を愛してくれないか？

聞きたい。
最上部長は聞いて欲しくないことかもしれないけど、私は聞きたいよ...。


「...残念ながら自分の気持ちに気付いた時は、菜々子は５年前からずっと好きな人がいてさ。...振られたよ」


そう言って笑ったけど、その笑顔は悲しそうで、そして苦しそうで。


「桜子も言っていたと思うけど、分かってはいるんだ。自分でもいい加減早く忘れようって。どんなに好きでいても仕方ないって。...分かってはいるんだけど、どうしても忘れられなくてさ...」


「.......」


胸が苦しい。
最上部長にこんなに想われているのに、なんで菜々子さんは最上部長じゃだめなの？

こんなに素敵でかっこよくて。
優しくて仕事が出来て。それにお料理まで出来ちゃうんでしょ？

なのに、なんで最上部長じゃだめなの？


私が菜々子さんだったら良かったのに...。


私だってどんな最上部長だって受け入れる。そんなことで引いたりしないのに。



「だからさ、本当の俺はみんなが思っているような男じゃなくて。...女みたいな趣味を持っていて、30歳過ぎてもいつまでも振られた女を忘れられないような女々しい人間なんだ。...幻滅させてごめん」


そんなっ！


「そんな幻滅なんてするわけないじゃないですか！」


そんなこと全然思っていないのに。なんでそんなこと言うの？