本当の俺を愛してくれないか?
「...小林さん?」


「最上部長、さっきもこんな俺なんかみたいな言い方してましたけど、そんなこと言わないで下さい!私は本当の最上部長の方がすっごく!素敵だと思います!」


ここが歩道ということも忘れて私は歩道の真ん中で立ち止まり、大きな声を出さないわけにはいられなかった。


「そんなことで引くなんて、本当の最上部長を知らないからですよ!
女々しくてもいいじゃないですか。私は沢山の人と付き合うような男性なんかより一人の人を想い続けてくれる男性の方が魅力的です。...だって私がその立場だったら凄く嬉しいし...」


「小林さん...」


幸せなことだよ。こんなに想ってくれる人がいるなんて。


「それに、私は無理に菜々子さんを忘れなくてもいいと思います」


「えっ?」


だってそうでしょ?
忘れた方がいいって肯定してしまったら、私の気持ちは?

私は最上部長が好き。
最上部長に素敵な彼女さんがいるって聞いてもこの気持ちは変わらなかった。


「好きって気持ちは大切じゃないですか。...そんな大切な気持ちを簡単に忘れるなんて言わないで下さい...」


私もそうだから。
例え報われなくてもこの気持ちは大切にしたいって思うから。
だから最上部長の素敵な気持ちも大切にして欲しい。



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