本当の俺を愛してくれないか?
「それはそうかもしれないけど、さ...」


「けど、何?」


あの日から色々考えちゃってるんだよね。


「確かに最上部長は私に少なからず心を開いてくれているかもしれない。...だけどさ、それはたまたま聞いてしまったのが私なだけで。...運がよかっただけって言うかさ...」


もし違う人が最上部長の秘密をしてしまっていたら...?って考えちゃうんだよね。

そうしたら今の立場が変わるだけで別に私だからってわけじゃない気がしちゃって。


「たまたま聞いたのが私ってだけで、別に私は最上部長にとって全然特別な存在じゃないと思うんだ」


それに私は今のままでも充分幸せだから。
幸せなのにこれ以上望んでしまったら、今の幸せが壊れてしまいそうで怖い。


「まぁ、宏美の気持ちも分かるけどさ。例え宏美の言っている通りだとしても、もしかしたらそうやって宏美がうじうじ悩んでいる隙に誰かに部長取られちゃうかもしれないんだよ?」


「えっ...?」


「だってそうでしょ?たまたま聞いたのが宏美だったなら、同じことがまた起こるかもしれないよね?それに彼女がいてもアタックする人もいるかもしれないんだよ?部長に本当に彼女ができちゃったらどうするの?」


「それは嫌...。でも最上部長はまだ...」


きっとまだ菜々子さんのことが凄く好きだと思う。


「バカね。分からないわよ?人の気持ちなんて。...宏美さ、そろそろ頑張りなさいよ。23にもなって本当にいいの?ただそばにいられるだけで。それだけで満足出来ちゃっているの?」


「それは...」


「中学生じゃないんだから満足出来るわけないでしょ?...本当は欲しいんじゃないの?部長の全部」


是っ、全部って...!



「やだ。なんか咲花、その言い方エロい」


別に私が言ったわけじゃないのに、恥ずかしくなってしまい既に飲み干したオレンジジュースを再度すする。


「なーに今更純情ぶってるのよ!ついこの間まで『私って変態かも~』とか言ってたくせして!」



「そっ、そういう時もあったけどさ!...でも今はなんか、想像できない」


ただ最上部長が私の前で笑ってくれるだけで嬉しくなっちゃって。
一緒に話せるだけで満足しちゃうんだもん。
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