本当の俺を愛してくれないか?
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「どっ、どうしよう咲花。やっぱり誘うの辞めようかな」


「今更なに言ってるのよ。お店も予約しちゃったんだから誘わなくちゃ!」


「うん...」


昨日の夜、最上部長が好きそうなレストランを予約してしまった。

もう後戻り出来ないようにって意気込んで予約して。そして勤務終了した今、まだ会議中の最上部長を待ってはいるんだけど...。


「どっ、どうしよう咲花!私今、人生で一番緊張しているんだけど!」


すがるように咲花の腕に抱き着く。


「その気持ちは痛いほど分かるけど、こればかりは私にはどうすることも出来ないわよ。頑張って!私は帰るから」


「えぇ!?咲花帰っちゃうの!?」


「当たり前でしょー?私がいたら明かにおかしいでしょ!...いい報告待ってるからね」


「あっ!ちょっ、咲花!?」


私の腕を振り払い、鞄片手にさっさと咲花は帰ってしまった。


「うっ...。緊張する」


誰もいないオフィス。そんなオフィスでたった一人最上部長を待つ私。


大丈夫大丈夫。
昨日の夜、散々一人で練習したじゃない。
変に堅苦しくなく普通にいつも通りに話し掛ければいいんだよね。


「あれ?小林さん、どうしたの?」


「ぎゃあっ!!」


...あ。


突然聞こえてきた声に思わず変な声が出ちゃったけど...。
ゆっくり恐る恐る振り返ると、やっぱり後ろにいたのは最上部長で。


最初は驚いた表情をしていたっていうのに、その表情はみるみるうちに変わっていって。

そして笑い出した。


「ごっ、ごめん小林さん。ただあまりにもさっきの小林さんが可笑しくて...」


可笑しい...?
うっ。でもさっきの声はさすがに恥ずかしかった。


「ところで仕事は?終わってないの?」


「あっ、いいえ、違くて!」


「え?仕事じゃないの?」


あーもう!
緊張している場合じゃない!今がチャンス!この時間に誰もオフィスにいないなんてこと、滅多にないんだから!

よし!!


「あっ、あの!最上部長!!」


「ん?」


うっ...!


見つめられると...って!!
恥ずかしがっている場合じゃない!


「あの!...その、最上部長!...えっと、突然なんですけど、24日の夜なんて空いていませんか?」


「えっ?」
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