本当の俺を愛してくれないか?
言ってしまった。

もう後には引き返せない。


「あっ、あの!その...最上部長、Skyっていうレストラン知っていますか?」


「えっ、Skyってあの雑貨屋と業務提携している...?」


「そうです!そのSkyでクリスマス限定プランがあって。得点であのお店のティーカップがもらえるんですよ!しかもクリスマス限定の!...その、それで良かったら一緒に行って頂けませんか...?」


...言ってしまった。
とうとう言ってしまった。あとはもう最上部長の返事を待つだけ。


誰もいないオフィスはしんと静まり返っていて。
それなのに私の心臓はうるさいくらいばくばく言っている。

聞こえていないだろうか?私の心臓の音。


「あっ...えっと、ごめん」


ごっ、ごめん!?

その言葉に下げたままだった顔を上げる。


「もしかして小林さん、気を遣ってない?」


えっ...?


「いや、ほら。俺のこと知っちゃったからさ。だから気を遣ってくれているのかと思って」


「そんなことないです!」


「それに、その、さ。小森と約束してたんじゃないのか?クリスマス」


「えっ...小森さん?」


「いや、その、噂で聞いたからさ。二人でクリスマスに出掛けるみたいだって。...俺のことは本当に気にしなくていいから。それにさ、仕事も山積みだし」


そんな...。違うのに。

気を遣ってなんていない。
小森さんと約束なんてしていない。

ただ最上部長と一緒にクリスマスを過ごしたいだけなのに...。


「私...。最上部長に気を遣ってなんていません」


「えっ?」


「それに小森さんとは約束なんてしていないですし!...私、ただ最上部長と一緒に過ごしたいだけなんです。同じ好きな物で楽しみたいだけなんです!」
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