本当の俺を愛してくれないか?
そのまま最上部長と他愛ない話をしながら送ってもらって。


私は最上部長の運転する車が見えなくなるまでずっと見送っていた。


それから24日までは淡々と過ぎていった。春に向けての新商品の開発へも大詰めを迎えていて。最上部長は誰よりも一番忙しそうだった。


そんな最上部長と他愛ない話なんてする暇もなくて。
気付いたら約束の24日を迎えていた。


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「ねーねー咲花、これでおかしくないかな?変に思われない?」


「もーそれ、朝から何回聞いたと思ってるの?大丈夫だから!可愛いよ」


勤務も終わって更衣室の中、何度も咲花にきいてしまっていた。


「化粧、濃すぎないかな?」


「だーかーら!大丈夫!それよりもう私、帰っていいかな?」


クリスマスイヴということもあり、女子社員はほぼ定時でみんな帰宅していった。
当然更衣室の中は私と咲花の二人だけ。


「あっ、待って咲花!私も一緒に会社出るから」


「えっ?部長のこと待ってないの?」


「うん。待ってて誰かに見られてもなって。どんなに遅くても七時までには終わるだろうから七時半に待ち合わせしようって言われて」


昨日、たまたまエレベーターの中で二人っきりになった時にこそって言われたんだよね。


「ほほーう。同じ会社なのに外で待ち合わせとはなんかいやらしいなぁ」


「えぇ!なっ、なんでよ!」


「べっつに?まぁ、健闘を祈る。頑張れ」


そう言うと咲花は私の肩を軽く叩いてくれた。


「うわぁ。寒いね外は」


「うん...」


咲花と二人会社を出て外に出ると一気に真冬の寒さが襲ってくる。


「なんか雲行きも怪しいし。もしかしたらホワイトクリスマスになっちゃうかもよ?」


「...だったらいいなぁ...」


もし本当にホワイトクリスマスになったら、きっと一生忘れられないでしょ?


駅に近づくにつれて人の多さも増してきて。特にカップルが多い。


「なんかこうやって女二人で歩いていると負け組みたいで嫌だね」


「そういえば咲花は?今日の予定」


ここ最近自分のことばかりで頭が一杯で、咲花の話を聞いていない。


「私?私は勿論心配ご無用ですよ」


「えっ..それって」
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