本当の俺を愛してくれないか?
通りすぎる人を見つめてしまうが、なかなか最上部長の姿が見えない。


しばらくしてもう一度時計を見ると、もう八時を過ぎていた。


「嘘...。もうこんな時間?」


だって会議はどんなに遅くても七時までには終わるって言ってたよね?


立ち上がり遠くを見つめるが、やっぱり最上部長の姿は見えなくて。


「ううん、きっと会議が長引いちゃってるんだよ」


きっとそう。
だって最上部長は約束を破るような人じゃないよ。


そう願いながら待ち続けるけど、やっぱり最上部長は来なくて。


再度時計を見ると八時半を過ぎていた。

そして道路を走り抜けていくのは、大きなサイレンを鳴らす救急車。


もしかして、事故、とかに巻き込まれたりしていないよね?


慌ててスマホを取り出しテレビを写し出す。


しばらくニュースを見ていたけど、都内で交通事故が起きたっていうニュースは流れていない。


一度火がつくと不安は増すばかり。


どうしよう。会社まで戻りなから最上部長を探した方がいい?


だけどすれ違いになっちゃったら困るし。


あっ!電話!!会社に電話すればいいんじゃない!
なんですぐに気付かなかったんだろう。


急いで電話帳で会社の番号を呼び出している時、


「えっ...嘘!ちょっと待って!」


スマホの画面は落ちてしまい、真っ黒になってしまった。


「..そん、なぁ」


会社の電話番号なんて覚えているわけないじゃない。


辺りを見回すが、公衆電話も見当たらなくて。


「あっ...」


追い討ちをかけるように雪が降り出した。
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