本当の俺を愛してくれないか?
「ダメだ。出よう...」


だいぶ長い間湯につかっていたためかくらくらする。


そっと浴室を出ると私が着ていた服は乾燥機の中でぐるぐると回っていて。
脱衣室にはバスタオルと最上部長が貸してくれた着替えが置いてある。


最上部長サイズの着替えは私には遠山の金さん状態。


「捲ればどうにかなるかな?」


それにしてもこれはヤバイ。
貸してもらった着替えはほのかに最上部長のにおいがして。
着ているだけで幸せな気持ちになってしまう。


...さて。
着替えも終わったし、出ないとだよね。
普通に出ればいいんだけど、この扉の向こう側には最上部長がいるのかと思うと緊張してくる。

だからと言っていつまでもここにいるわけにはいかない。


よし!!
気合いを入れ、ドアノブに手を掛けてそっとドアを開ける。


すると匂ってきたのは、美味しそうな甘い匂い。


リビングに最上部長の姿はなくて。
匂いに連れられるようにキッチンへと向かうと、そこには最上部長の姿があった。


「最上部長...?」


呼び掛けると最上部長も気付いてくれて。


私の姿を見るとクスクスと笑い出す。


「ごめん、やっぱり大きかったね、それ」


やっ、やっぱり捲っても遠山の金さん!?
恥ずかしい。


「あっ、あの!お風呂ありがとうございました!...それに着替えも」


最上部長の顔が見れない。


すると頭には懐かしい暖かなぬくもり。


「よく乾かさないと。風邪引くよ」


えっ...?


すぐにそのぬくもりは消えてしまったけど、さっき最上部長は私の頭をポンポンしてくれたのだけは絶対なわけで。



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