本当の俺を愛してくれないか?
クリスマスに誘ってくれた時の気持ち。


当日会議で、遅刻してしまったのに舞っていてくれた時。


怒らないで俺の心配をしてくれた時。

お詫びに作ったケーキを本当に美味しそうに食べてくれた時。


今までは何かにつけて菜々子を当てはめては思い出していたのに、そんなことは一度もなくて、表情がころころ変わる彼女が頭にやきついて離れなくて。


もっと彼女と一緒にいたくて、俺は自分でも驚くほど一杯彼女に話し掛けていた。
笑ってくれるのが嬉しくて、俺の服があまりに大きすぎるのが可愛くて。


同じ部屋の中にいて、こんなに近くにいるのに抱き締められないのがもどかしくて。


短い時間の中で気付かないうちに、俺は菜々子以上に彼女のことが好きになってしまっていたんだ。


気付いてしまうと、気持ちが加速するのは早く。
伝えたいのに、仕事に追われて時間を作る暇もなくて。


だから仕事が一段落したら伝えようと決めていた。


もう二度と後悔なんてしたくないから。

気付くのが遅すぎたって後悔、したくないから...。


ーーーーーーーーー

ーーーーーー


「くそっ!どこに行ったんだ!?」


どこで誰に聞いたか分からないけど、みんなの前で秘密をばらされてしまい何も言えずにいた時、小林さんが助けてくれた。
軽蔑なんてしないって言ってくれて、そして俺を好きだと言ってくれた。


聞いた時、どんなに嬉しかったか...。

なのに小林さんは『ごめんなさい』と言ってオフィスから出ていってしまった。


最後の言葉の意味はなんなんだろう?
好きって気持ちは嘘だってことなのか?

俺はこんなにも嬉しかったのに...。

< 84 / 86 >

この作品をシェア

pagetop