終わりを紡ぐモノクロ
はじまりの物語
むかし、むかしのおはなしです。
あるところにおおきくもちいさくもないけれど、けっしてよわくないくにがありました。
そのくにのおおさまは、つよくけだかく、それはそれはおだやかでした。
いつも、かたわらにきしをしたがえ、さっそうとすすむおうさまは、みなのあこがれでした。
くには、へいわでした。
しかし、あるとき、おうさまのもとにまじょがあらわれていいました。
「あなたはとてもつよいおうさま。でもそれだけ。だからもうすぐこのくにはほろぶでしょう。」
おうさまはまじょのことばもきちんとききました。けれど、そんなことはとてもしんじられません。
なぜかととうと、まじょはいいました。
「わたしではないまじょがあなたをうらんでいます。しかし、あなたはまじょをたおすことができない。」
むう、とうなるおうさまに、まじょはさらにいいました。
「いまなら、わたしがたすけてさしあげる。ながいへいわをこのくににささげてさしあげる。…そのかわり、おんなのこをください。あのはずれのとうに、おんなのこを。」
おうさまは、こまってしまいました。
くにのことも、たみのこともだいじです。ましてやかよわいおんなのこをまじょにさしだすなんて、おうさまにはできませんでした。
「おねがいします、おうさま。こどもができぬわたしに、どうかおんなのこを。」
おうさまは、けつだんしました。
くにのために、とうにおんなのこを。まじょにおんなのこをさしだしたのです。
だれも、おうさまをせめませんでした。
おうさまは、まいにちまいにち、はずれのとうにかよい、おんなのこのためになみだしたからです。
やさしいおうさまが、みな、だいすきだったのです。
くには、いまもへいわです。
たったひとりのおんなのこのためにないたおうさまのむすこたちが、りっぱにくにをおさめ、いまもくにはおだやかにつづいています。