終わりを紡ぐモノクロ

人の通るべき道は辛うじてあるものの、雑草に埋もれかけている地を足許に気を付けながら進む。
物語の王のように塔へ毎日通う者などいないのが見てとれ、顔を顰めた。
…現状はこんなものなのか。女の子を閉じ込めていないから通わない、という事ならば良いのだけれど。

「…随分と近付いたかな。」

広い城郭の端、外れの誰も立ち入らぬ塔。
これだけ近付くと、やはり大きい。普段、窓から見るものとは大違いだ…どれだけ離れているのだろう。


暫く進むと、少しだけ拓けた場所がある。目の前に聳えるのは言わずもがな、目指していた塔だ。
扉は固く閉ざされ、周りを見る限り誰かが来た形跡もない。

「重そうな扉…開く、かな。」

扉に触れる。
手袋越しに伝わる冷たさに、僅かに不安を覚えるが、今更引くことはしない。そっと力を込めると、扉は軋みながらも思っていたよりも軽い力で開いていく。


塔の中は埃っぽく、昼だというのに暗い。目を凝らし辺りを見渡せば、塔の中を渦巻き上へ上へと続く階段が見える。この上に、部屋があるのだろうか。

「灯りくらい、持ってくるべきだったなあ…」

ぼやいたところで灯りが灯る訳もなく、闇に目が慣れていくのを感じながら、長く続く螺旋を黙々と登っていく。
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