徒花
「ダボの兄貴ってさ、いいやつではあるんだけど、ちょっと鈍臭いんだよ。一生懸命なのにどっかヌケてるっていうか。だから自分が“跡継ぎらしくない姿”をわざと演じることが、ダボなりの家族への思いやりだったのかもな」
「………」
「あいつ、あれで結構、兄ちゃんっ子なとこあるし。俺とは違って、ダボって実は、家族とか仲間とか、そういう繋がりをすげぇ大切にしてんの」
跡継ぎの座を兄に譲ったダボくん。
弟が生まれたことによって跡継ぎの座を奪われる形になったコウ。
ふたりが昔からずっと親友でいられてる理由が、何となくだけど、わかった気がした。
「コウもダボくんのこと大切にしなきゃだね。こんなろくでなしと親友でいてくれる奇特な人、そうそういないんだし」
「おいおい、お前今、さらっと失礼なこと言ったよな。つーか、俺は“元ろくでなし”であって、今は違う」
胸を張って言うコウを見て、私は腹を抱えて「馬鹿だ」と笑った。
笑ったら、「この野郎」と怒ったコウに首を締められた。
でも全然苦しくなくて、私はそれでもまだ、笑っていた。
「コウ!」
振り返ると、遅れてやってきたユキチくんは、きょとん顔。
「あれ? ダボは? 何でいねぇの? ったく、時間にルーズなやつってダメだよなぁ」
「お前が言うなっつーの」
空気を読まないユキチくんの発言に、さすがの私も笑ってしまう。
「ダボなら帰ったよ。っていうか、ユキチこそ何? 呼んだっけ?」
「おいおい、ひでぇな。そりゃねぇだろ」
大袈裟な身振りをして見せるユキチくん。
ユキチくんは私たちの隣に腰を下ろし、
「まぁ、そういう冗談は置いといて。カイと連絡取れねぇ?」
不機嫌に聞いてきた。
「あいつ、ほんと何やってんだろうな。メールしても返さねぇし、電話にも出ねぇ。まさか変な事件にでも巻き込まれてんじゃね?」
「………」
「あいつ、あれで結構、兄ちゃんっ子なとこあるし。俺とは違って、ダボって実は、家族とか仲間とか、そういう繋がりをすげぇ大切にしてんの」
跡継ぎの座を兄に譲ったダボくん。
弟が生まれたことによって跡継ぎの座を奪われる形になったコウ。
ふたりが昔からずっと親友でいられてる理由が、何となくだけど、わかった気がした。
「コウもダボくんのこと大切にしなきゃだね。こんなろくでなしと親友でいてくれる奇特な人、そうそういないんだし」
「おいおい、お前今、さらっと失礼なこと言ったよな。つーか、俺は“元ろくでなし”であって、今は違う」
胸を張って言うコウを見て、私は腹を抱えて「馬鹿だ」と笑った。
笑ったら、「この野郎」と怒ったコウに首を締められた。
でも全然苦しくなくて、私はそれでもまだ、笑っていた。
「コウ!」
振り返ると、遅れてやってきたユキチくんは、きょとん顔。
「あれ? ダボは? 何でいねぇの? ったく、時間にルーズなやつってダメだよなぁ」
「お前が言うなっつーの」
空気を読まないユキチくんの発言に、さすがの私も笑ってしまう。
「ダボなら帰ったよ。っていうか、ユキチこそ何? 呼んだっけ?」
「おいおい、ひでぇな。そりゃねぇだろ」
大袈裟な身振りをして見せるユキチくん。
ユキチくんは私たちの隣に腰を下ろし、
「まぁ、そういう冗談は置いといて。カイと連絡取れねぇ?」
不機嫌に聞いてきた。
「あいつ、ほんと何やってんだろうな。メールしても返さねぇし、電話にも出ねぇ。まさか変な事件にでも巻き込まれてんじゃね?」