徒花
「さすがにそれはないっしょ」

「いや、でもさ、カイとこれだけ連絡取れなくなったこと、今まであったか?」


カイくんとは幼馴染らしいユキチくんは、前のめりに怪訝な顔をする。

私もそれは少し心配だった。



「カイって昔から、何考えてるかわかんねぇとこあるし。でもさ、秘密主義もあそこまでいくと腹立つよなぁ」

「………」

「悩んでたとしても、誰にも相談しない。それどころか、自分で決めて、解決しちゃって。で、事後報告だ。こっちは心配してやってんのにさ」

「………」

「まぁ、どうせ今回だって、いくら心配したところで、こっちの取り越し苦労にしかならねぇんだろうけど」


ユキチくんは白黒はっきりさせたい性格らしいから、それが不満なのだろうけど。

でも、大人になると、案外そんなもんなんじゃないかと、私は思う。


コウは聞いているのかいないのか、大あくび。



「おい、コウ! お前、人が真剣に話してる時に、何だよ!」

「あぁ。悪ぃ、悪ぃ。俺もう眠くてさぁ」


ユキチくんは「はぁ?!」と顔を歪ませ、



「ほんっと、ムカつくよなぁ。仕事始めたんだっけ? コウのくせに、何のギャグだよ」

「ギャグじゃなくてマジだっつーの。でも、早起きはいいぞ? ユキチもやってみろ」

「うげー。ありえねぇ。まさか、コウの口からそんな言葉を聞く日が来るとは」


やっぱり大袈裟な身振りのユキチくん。

傍から見たら恥ずかしい人だ。



「あのなぁ、考えてもみろよ。俺らもう、ハタチ越えてんだぜ?」

「まぁ、確かにな。今まではいっつもみんなでツルんでたけど、そのうち会うことも減って、馬鹿なことも言わなくなって。そう考えたらちょっと寂しいけど」

「けど、それが普通だろ。いい年して遊んでる方が恥ずかしいっつの」

「確かに正論だけど、一番遊びまくってたコウに諭されたくはなかったぜ」


笑う私と、「うるせぇ」と不貞腐れるコウ。

ただのチャラチャラした集団だと思ってた4人だけど、当たり前に、それぞれの考えを持って生きている。

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