徒花
コウは何だか納得できないというような顔をしていたが、笑う私を見て、「この野郎」と不貞腐れる。

だけど、私はそれを無視し、



「あ、そうだ。忘れないうちに」


バッグをあさった。

ラッピングのされた細長い箱を、コウに差し出す。



「何?」

「お祝いってわけじゃないけど、プレゼント。すっごい悩んだんだよ」

「マジか」


急に目を輝かせたコウは、ラッピングを紐といていく。

そして箱を開けて、中身を手に取り、



「すげぇ。かっこいいじゃん」


ゴツゴツしてて、チェーンの長い、大きなクロスのネックレス。

メンズに人気のブランドで、少々値は張ったが、コウがすごく嬉しそうな顔をしてくれたから、何日も悩んだ甲斐があった。


コウは早速、それを首からぶら下げる。



「絶対、似合うと思ったんだ」

「まぁ、俺は何つけても似合うけどな」

「ちょっと! そんなこと言うなら、あげないからね。返して」

「嘘だよ、嘘。めちゃくちゃ嬉しい」


この男の調子のよさは生まれつきなのかもしれない。

私は口を尖らせた。



「ほんとにそう思ってるの?」

「思ってるって。死ぬほど大事にする。死んでも離さない」

「まったく」

「サンキューな」


けれど、それで許してしまう私も私なのだろう。


コウは食事もそっちのけで、私があげたネックレスを嬉しそうにいじっていた。

まぁ、喜んでくれたならいいけれど。

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