徒花
食事を終えた私たちは、バーに移動して飲み直した。
そこでいい感じに酔っ払ってぶりがついて、それから今度はカラオケで騒ぎまくった。
コウは仕事で疲れているはずなのに、そんなこともまったく感じさせないほど、楽しんでいるみたいだった。
歩きながら帰宅の途についたのは、午前2時を過ぎた頃。
すっかり酔っ払いの私たちは、肩を組んで歩きながらキスをしたりと、人の目さえも気にしなかった。
ふたりして千鳥足のまま、マンションの少し手前の公園のベンチで休憩する。
空には満点の星。
夜の少し冷えた風に、火照った体の熱を奪われる。
思い返しても最高の一日で、おまけに心地よくて、もう今日はここで寝てしまいとすら思ったのに、
「こら、寝るな。家までもうちょっとだぞ」
「ちょっとだけだから、寝かせてよー」
「馬鹿か。起きろ、ほら」
それでもコウの肩にもたれかかったままの私。
コウは「起きろって」と、私を揺すった。
うとうとしながらも、何とか目を開けた私を横目に、コウは咥えた煙草の煙を夜空へと吐き出しながら、
「しっかし、俺マジで今、働いてるんだよなぁ」
苦笑いする。
そしてまたうとうとしそうになる私の頭をくしゃくしゃっとし、
「これならハタチのうちに結婚できそうじゃね?」
「だね」
「俺の誕生日が9月だから、やっぱりその前に入籍だけはしときたいし。式は、理想はクリスマスだけど、1月のマリアの誕生日でもよくね?」