徒花


駅前のカラオケ屋の一室のドアを、ふたりはバンッと開ける。



「よー、久々!」

「お前ら、楽しそうじゃねぇかー」


驚いた顔をする、3人の男の子たち。

私には見覚えのない子たちだったが、コウもカイくんも、そんなことを気にしてはくれない。


だけど、知らない男の子たちに囲まれるのも、もう慣れていたから。



「乱入ー! そんで今日は気分がいいから俺様の奢りだー!」


カイくんは完ぺきな酔っ払いだった。

この人がここまではしゃぐ姿なんて初めて見た。


カイくんは、早速マイクを握り締め、好きな曲を入れていた。



「コウさん、聞きましたよー。結婚するんでしょー」

「あ、こっち座ってくださいよ! おい、酒追加しろ! ビール、ビール!」

「つまみはポテトでいい? コウさんも好きなもん言ってくださいね!」


私は一番端に座る。

カイくんはガラステーブルの上に土足で立ち、お立ち台のようにして熱唱していて、もう部屋はめちゃくちゃだった。


どんちゃん騒ぎとかいうレベルじゃない。


歌っているのか叫んでいるのかわからないようなカイくん。

ゲラゲラ笑いながら酒を飲み続ける、コウと後輩くんたち。



私はため息以外、出なかった。



コウとバトンタッチしたカイくんが、「飲んでる?」なんて言いながら、私の隣に座った。

私は肩をすくめて見せ、



「今日、何でそんなにテンション高いの? 今までずっと姿を見せないで、地元に戻ってたって聞いたけど、向こうでいいことでもあった?」


カイくんは煙草を咥えた。
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