徒花
叔父たちの矛先は、パパとママに向いた。

「馬鹿な兄貴」、「あんな女」と連呼される度、私は悲しくなった。


確かにママは普通の家庭で育った人だけど、パパとは深く愛し合っていて、おばあちゃんはちゃんと結婚に賛成していたと聞いている。



「ばあさんはボケてたんだよ! だからこんなの無効だ!」

「これはあの女の呪いに違いない! 死んでもなお、結婚を反対した俺たちに嫌がらせをしているんだ!」

「いや、遺言を書かせて、用済みになったばあさんに、マリアが毒でも盛ったんじゃないのか? そうじゃなきゃ、この前まで元気だった人間がこうあっさり死ぬものか!」

「あぁ、きっとそうだ。親がいないこいつは、甲斐甲斐しくばあさんの世話をするふりをして、いつも金の無心をしていたんだから」

「弁護士の伊藤を呼べ! あと、懇意にしている警察の江口もだ! これは殺人だ!」


叔父たちは頭がおかしいんじゃないのかと思った。



自分たちは一度としてホームに足を運んだことすらなかったのに。

そういう叔父たちの性格をわかっていたからこそ、おばあちゃんは叔父たちと疎遠になっていたのに。


なのに、言うに事欠いて、私がおばあちゃんを殺したって?



「馬鹿じゃないの」


私は吐き捨てた。


おばあちゃんだけじゃない。

パパやママまで愚弄されて、これじゃあ誰も安らかになんて眠れない。



だけど、叔父たちは、睨んだ私を睨み返し、



「貴様の素性は調べている。あの街で、キャバクラ嬢をやっていたそうじゃないか。代々続く我が家の名を汚しやがって」

「ばあさんから奪った金でも足りないからそんな汚い仕事までして稼いでいたんだろう? そしてさらに金が足りなくなったから、貴様は今度はばあさんを殺したんだ」


私は唇を噛み締めた。
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