徒花
私が悪いと言うなら、それでいい。

実際、私はおばあちゃんの最期を看取ってあげられなかったから。


だけど、おばあちゃんの遺影の前で言い争うようなことだけはしないでほしかったのに、



「薄汚い人殺しめ! 同じ空気を吸っているだけで気分が悪くなる!」

「本当にそうだ! 我が家にこんな人間がいるかと思うと、気持ち悪い!」


キモチワルイ。

ぐさりと突き刺さる。


親族中の誰もが私を蔑むような目で見ていた。



「まったく、これからどうしろと言うんだ」


叔父はおばあちゃんの遺影に向かって吐き捨てた。



「兄さんはいいじゃないか! 兄貴が死んで、あの会社を譲り受けたんだから!」

「お前だってばあさんから金をもらってあんなデカイ家を立てて! 人のことを言えないだろう!」

「うちは今度、息子が大学に進学するんだ! 下の娘だって中学受験が控えてる!」

「そんなのこっちだって同じだ! ばあさんの金をアテにしてたのに!」

「やっぱり兄貴だってばあさんから金をもらってたんじゃないかよ! それを、俺だけがもらってたような言い草で!」

「何だと?! 誰に向かって言ってるんだ!」


今度はふたりで喧嘩を始める始末だ。



誰かに助けてほしかった。

助けてくれるなら、もう誰だってよかった。


私は強くもないし、だからひとりでは生きられない。



愛してほしいなんて我が儘はもう言わないから、だから私をここから救い出してほしかった。

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