徒花


何も感じないと思っていたはずだったのに、やっぱり行為は下腹部の痛みと共に、あの日のことを思い起こさせる。

無理やりに、振り払うように及んだそれは、ただの荒療治だった。


そんなもので治まる傷じゃないというのに。


ひどい頭痛がした。

その所為で吐き気まで込み上げてくる始末だ。



「マリア、どした?」


体を起こし、煙草を咥えたてっちゃんでさえ、さすがに私の異変には気付いたらしく、眉を寄せる。



「風邪かもしれない。頭痛いし」

「マジでか。そういうことは早く言えよ」


私の嘘に、らしくないことを呟き、てっちゃんは立ち上がった。

そして引き出しを探りながら、



「あー、今これしかねぇけど。飲むか?」


と、私に錠剤を見せた。



「ちょっとキツイかもしれねぇけど、ねぇよりマシだし。そんで今日はもううちに泊まれよ。どうせ明日も暇してんだろ?」

「うん。じゃあそれもらう」


てっちゃんはグラスに水を溜めて、錠剤と共に差し出してくれた。


私は一緒に流し込む。

こんなもので何が変わるわけでもないけど、とりあえず少しでもこの頭痛を緩和させたかったから。



「気持ち悪くなったら言えよ?」

「何かてっちゃんが優しいと変な感じだね」

「マリアだからだよ。言ったろ? 俺の気持ちは変わってねぇから」
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