徒花
「……野良猫なの。でも私は友達だと思ってた。それなのに……」


それなのに、私は身勝手だった。


好き勝手にエサをやりながら語り掛け、自分のことで手一杯になるとその存在すらも忘れ去っていたのだから。

それのどこが“友達”だと言えよう。



なのにコウは私の手を引いて立ち上がらせ、



「わかった。じゃあ、俺も一緒に探してやるから」


自分自身に辟易した。


コウが私なんかに付き合う理由はないのに。

いや、そもそもどうしてそれでも傍にいるのかと思う。



「どんな猫だ? 何か特徴とかあるか? 行きそうな場所に心当たりは?」


コウは私の手を引き、歩きながら問うてきた。

だけど私は泣いてばかりで何も答えられなかった。



大切なものを大切にしなかった、これは罰なのかもしれない。



私はいつもそうなのだ。

諦めたふりをして、すぐに目の前のものから手を離す。


なのに身勝手だから、いなくなったら悲しく思う。


何もかもが独りよがり。

だから嫌われたって当然だ。



「そんな心配すんなって。猫なんて気まぐれなんだから。どうせそのうちひょっこり現れるよ」

「………」

「猫って自分の縄張り以外からは出ないらしいし。だから大丈夫だっつの」


コウは路上駐車している車の下を見たり、家屋の軒先を覗き込んだりしながら、私を励ます。

また私の胸が軋んだ。

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