徒花


ボスはどこを探しても見つからない。


いくら体力が少し戻ったとはいえ、まだ万全でない私は、すぐに息が切れたが、でもそんなことを気にしている余裕なんてなかった。

一心不乱にボスを探して歩き続けた。



「マリア、少し休め」


という、コウの言葉も聞こえないほどに。



陽が陰り始めてもなお、アスファルトからの熱に照り返される。

ひたいには大粒の汗が伝い、何度拭っても、それが止まることはない。


けれど私は足を止めなかった。


どうしてここまでしているのかなんて、自分でもわからない。

でも、どうしても、ボスを見つけてあげなきゃいけない気がした。




何かに呼ばれているような、今思えばそれは、ボスの意思だったのかもしれない。




「マリア、明日にしよう? これ以上は無理だ。もう陽が落ちる。いくら何でも夜になったら探せねぇよ」


コウのその言葉でやっと我に返った。


辺りはすっかり薄墨の色に染められていて、闇夜も目前まで迫っていた。

さすがにコウの言う通り、もうこれ以上は無理だろう。



近くには、薄気味悪くて普段は誰も近付かないような、“お化け公園”と呼ばれる場所があった。



木々で囲まれ、うっそうとしてて、錆ついたブランコが吹く風に揺らされる度、キィ、キィと鳴っている。

ざわざわと胸が掻き乱される。


刹那、ぶにゃあ、とあの潰れたような鳴き声が、微かにだけど聞こえた気がした。



「ボスだ!」
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