徒花
老衰と思えるほど年老いてもいなかった。

病気をしていたような毛並みでもない。


だとするならば、夏の熱さの所為なのか、それとも変なゴミを漁ったために食中毒にでもなったのか。


とにかくこれは私の所為だ。

コウが言うように、私も本当にボスに最期に呼ばれた気がするからこそ、余計にそう思えてくる。



溢れた涙が止まらない。



「マリアの所為じゃないよ。誰の所為でもない」


コウはそう言ってから、近くにあった木の枝を拾った。

そしてそれで、そこを掘る。


コウは手を泥で汚しながらも、ボスのための穴を掘り続けた。


陽が落ちるとすぐにお化け公園は真っ暗闇に包まれた。

近くの道路から照るわびしい街灯の明かりだけを頼りにしながらも、コウは手を休めようとはしなかった。



私たちは、ボスを埋葬してあげた。



結局、ずっと私は泣いていた。

泣きながら、後悔の念ばかりに責め立てられていた。


コウが再び口を開いたのは、それからどれくらいが経ってからだったろう。



「俺、こいつに感謝してるよ」

「……え?」

「マリアが喋ったから。もう二度と喋らないんじゃないかと思ってた。ほんとはずっと、それくらい毎日が不安だった」

「………」

「でも、こいつのおかげだよ。友達だったんだろ? こいつ――ボスも、だからきっとマリアのこと心配だったんだんだと思う」
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