徒花
だからコウは私を助けたの?

私がマワされたなんて知らずに、私を想い続けてた?


涙が溢れて、そしたらコウに抱き締められた。



「……やめて、離してっ……」

「離さない」

「やだっ! 私はレイプされたのに! クスリだってしてたのに! お願いだから離してよ!」


キモチワルイ。

あれから、何度となく私の頭の中で繰り返されてきた言葉。



「関係ねぇよ。マリアはマリアだ。俺の気持ちは変わらない」

「嘘だっ!」

「嘘じゃない。お前は何も悪くない。……悪いのは、カイだ」


吐き捨てるようにコウは言う。

その目は憎悪に満ちていた。



「カイがどうしてそんなことしたのかはわかんない。でも、どういう理由だとしても、俺はあいつを許さない」

「………」

「このままにはしない。絶対に」


私は上擦った呼吸のままに肩で息をしながら、コウを見上げた。



「私の言葉を信じるの? 親友より? クスリをしてた女が言ったことだよ?」

「お前は俺に嘘なんかつかないし、そんな作り話をする意味がない」

「でも!」

「それに、カイならやりかねない。あいつは自分の中でそれが正当な理由だと思えば、人だって殺すだろう。そういうやつだ」

「………」

「けど、あいつが何を考えてたとしても、やっていいことと悪いことがある。言い訳によっちゃ、殺したって済まねぇよ」


コウは私の手を引き、立たせてくれた。

そして私に「帰ろう」と言った。


無言で私の手を引くコウの顔は見られなかった。

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