徒花
「できたよー」
作った料理をテーブルに並べる。
味噌汁と、焼き魚と、煮物。
「和食だ」
「嫌い?」
「いや、あんまり食わないだけ」
「味は自信あるから食べてみてよ。おばあちゃん直伝だし」
「すげぇな」
「そうでもないよ。私、和食しか作れないから。それに、別に料理好きってわけでもないし」
「いや、でも、すげぇよ」
コウは「いただきます」と言って箸をつけた。
私は向かいに座って紅茶を飲む。
「なぁ」
「んー?」
「じゃあ、親が死んでからは、ばあちゃんと暮らしてたってこと?」
「中三まではね。高校に入学する時に、私ひとりでこっちに来て、それからは」
「ばあちゃんは?」
「今は老人ホームで悠々自適に暮らしてるよ。終の棲家にするんだって。恋人までいるみたいよ。月に一回は会いに行ってるけど、楽しそうにやってる」
「ふうん」
コウは味噌汁をすすりながら、「美味いな」と言った。
おばあちゃんの味を褒められたみたいで、私は嬉しくなった。
「私ね、おばあちゃんのこと大好きだし、育ててもらって感謝もしてるの。ほら、私みたいなのって、一歩間違えば施設で暮らしたりっていう話も聞くし」
「あぁ」
「だからさ、おばあちゃんにだけは心配かけないようにしなきゃ、って。恩返しとかもしたいんだけど、なかなかね」
コウは上目に私を一瞥し、
「恩とかそういうの、俺よくわかんないんだけど」