徒花
コウの所為じゃないとわかっても、こんな関係を続けない方がいいことに変わりはない。

私たちには『これから』なんてない方がいいのに、



「マリア。聞いてくれ」


コウは強い口調で私に言った。



「あの日、お前を残して行ったことに対する罪悪感がないって言ったら嘘になる。その所為で、理由はわかんねぇけど、カイがお前を苦しめた」

「………」

「でもな、俺は、もし二度とお前とヤレねぇとしても、気持ちは変わらない。もうマリアだけは失いたくねぇんだ」


心が痛かった。

胸を鷲掴まれたような気分だった。



「泣くなよ。お前の泣いてる顔はもう見たくないんだ」


自分が泣いていたことに気付かなかった。

コウは私の涙を、指の腹で拭ってくれる。



「確かに俺は男だから、やっぱどんなに頑張ってもお前の気持ちはわかんねぇよ。けどな、守ってやることはできるから」

「………」

「マリアは汚くなんかねぇよ。何も変わんねぇ。傷も、過去も、全部俺に背負わせろ。そんで余計なもんは捨てればいい」

「………」

「もう離さない。離したくねぇんだ、お前のこと。誰の代わりでもない、マリアだけがいればいい」


その時やっと私は、自分から、コウへと手を伸ばした。

虚勢という檻に閉じ込めて、必死で押し殺していたものが、溢れてくる。


涙が止まらない。



「好きだよ。すげぇ愛してる」


コウは私の涙の伝う頬にくちづけを添えた。

そして目が合うと、今度は唇に、触れるか触れないかのキスが。


コウは私の頭を撫で、言葉を選らんでためらうような顔をしながらも、
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