徒花
「ユキチ。言いすぎ」


ダボくんが口を挟んだ。



「お前ちょっと喋るな。コウの言い分と、カイの異論を聞こうじゃない。ほんと、ユキチはまだ話が見えてないうちから熱くなりすぎなんだよ」

「………」

「大体、ユキチだって少し前まではマリアちゃんとのこと、賛成してたくせに。なのに、いきなり手の平を返して、お前調子よすぎじゃね?」


ダボくんは冷静だった。

ユキチくんは舌打ち混じりにまた椅子を蹴り飛ばす。


ダボくんはカイくんを見た。



「なぁ、カイ。やったならやった、やってないならやってない。面倒な誤魔化しは止めて、本当のこと言えよ」


ダボくんに見据えられたカイくんは、ついに観念したみたいな顔で大きく肩をすくめ、



「つまんねぇの。もう全部ばれてんじゃん」


はっと笑う。

コウは拳を作るが、ぐっとそれを堪えた。



「そうだよ。俺はあの後輩共に上手いこと言って、マリアちゃんを犯させた。あれはほんとに気分爽快だったな。ビデオ撮ればよかった。コウにも見せてやりたかったよ」

「てめぇ!」


コウは堪え切れなくなったのか、カイくんを掴みにかかる。

が、すんでのところでダボくんがそれを止めた。


ダボくんが代わりに聞く。



「理由くらいあるんだろ?」

「理由? あるよ。だから俺は何も悪くない」

「レイプが『悪くない』ことだって言うんだな?」

「まぁ、確かに犯罪だから『悪くない』ことはないかもね。でも、だから何? やられたからやり返しただけだ」

「……『やられた』って?」

「コウが今俺に対して怒ってることと同じように、俺もコウに対して怒ってんだよ。すごく。殺してやりたいくらいにね」
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