徒花
ゆっくりと、ベッドに倒された。

見上げたコウは、不安そうに瞳を揺らす。



「……いいの?」


私はうなづく。


もしも私とコウが離れられない運命なのだとしたら、地獄の底までも、一緒に行ってあげようと思った。

たとえ、そこにしか幸せがないのだとしても、私はコウとふたりでそれを手にしたいから。



コウは震えそうな手で私の柔肌に触れる。



「目、閉じるな。俺のことだけ見てて。怖いなら止めるから」

「いっぱい私の名前を呼んで」


コウは私の言葉に少し目を丸くして、でもふっと笑う。

やっと笑ってくれた。



「愛してるよ、マリア」


ここには愛がある。

だから、あの時とはまるで違う。


私はコウの腕の中で、その優しさを噛み締める。



コウは何度も私の名前を呼んでくれた。



「好きだよ」、「愛してる」、と繰り返しながら。


私たちは、誰に何を言われようとも、ふたりでいようと決めたから。

だからこれは、誓いの儀式のようで。



「大丈夫。病める時も健やかなる時も、たとえ死ぬ間際だって、俺はお前と離れない」


コウは涙の伝う私の頬に、そっとくちづけをくれた。

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