徒花
「お前ら、もっといいもん食えよ。何も、わざわざ金払ってこんな不味い店の飯食うことねぇだろ」


店主がいることも気にしないで、菅野さんは大声で言った。

なのに、菅野さんは勝手に私たちのテーブルの上の焼き鳥をひょいと取り上げる。


そしてそれを咀嚼しながら、「やっぱり不味いな」と言った。



「不味いと思うなら来なきゃいいじゃないっすか」


コウは、言わなくてもいい嫌味を言う。

私は密かにはらはらした。


けれど、菅野さんは笑いながら「そりゃそうだ」と言い、焼き鳥の串を爪楊枝のようにして咥え、



「相変わらず暇そうだなぁ、お前ら。どうせ遊びの相談でもしてたんだろう?」

「だったら何すか?」

「うちの組に入れよ。忙しくさせてやるから」

「しつこいっすよ。入りませんって。あんた結局、それが言いたいだけでしょ」


コウはぴしゃりと言い放つ。

それにしても言い方ってものがあると思うんだけど、と、私はまたはらはらする。


なのに、やっぱり気にしてないらしい菅野さんは、大袈裟に肩をすくめて見せ、



「お前、ほんと強情なやつだよなぁ。堅気のガキでこんなに俺に偉そうなこと言うやつなんて、お前くらいのもんだぞ」

「だからっすよ。ヤクザになんてなったら、あんたに偉そうなこと言えなくなるでしょ」

「ったく、目上の人間を敬いもしねぇなんて、どういう教育を受けたんだか。親の顔が見てみたいってもんだ。お前、俺じゃなかったら殺されてるぞ?」

「はいはい、すいませんでしたー」


だからってコウは、態度を改めないどころか、うざったそうに言い返す。

さすがに菅野さんも舌打ちする。



「やっぱりお前は馬鹿だよ。カイとは大違いだ」

「……え?」

「ん? 何だ? お前、知らなかったのか? あれだけ一緒だったくせに」


菅野さんは目を丸くしながらも、



「カイ、うちの組に入ったんだぞ」
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