徒花
コウは言い切った。

私はその胸に顔をうずめ、



「私もね、ずっと不安だったの」

「うん?」

「私がクスリやってた過去は、何をしたって消えないよ。コウは、ほんとにそんな女と一緒でいいの?」


コウは私を抱き締めた。

人が通ることも気にしないで、強く、強く、抱き締める。



「そういうの、全部含めてマリアだ。で、俺はそんなマリアがいいんだよ。だからもう、誰がなんと言おうと、気にするな」

「………」

「見せつけてやりゃあいいんだよ。でも、邪魔するやつはぶっ飛ばすけどな」


泣き笑い。



「大好きだよ、コウ。すごく、すっごく、大好き」

「おー」


気恥ずかしかった。

こんなに素直に気持ちを言葉にすることなんて、いつぶりなのか。



「早く帰ろうぜ。間違ってここでヤッたら大変だからな」

「馬鹿だ」

「あ?」

「だって、コウ、それじゃただの変態だよ」

「はぁ?! お前、言うに事欠いて、愛しの旦那を変態呼ばわりするんじゃねぇよ。俺はただ、純粋に――」

「はいはい」

「聞けよ、おい!」


涙が涸れるほど、笑った。

笑っているだけで幸せだと思えた。


どうやら私たちは、マサくんに、返し切れない恩ができてしまったらしい。



手の中にある、コウと揃いのお守りを、強く握り締めた。

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