徒花


3日後。



コウの誕生日は、ふたりでささやかにお祝いをした。



どこにも行かなかった。

プレゼントすら用意できなかった。


けれど、今はふたりで静かに過ごせる幸せを、大切にしていたかった。



「21歳ってどんな感じ?」

「昨日と今日じゃ、何も変わらねぇよ。でも、強いて言うなら、ハタチのうちに結婚したかったのに、夢がついえて悲しい気分」


こんな時だから仕方がないのかもしれないけれど、湿っぽい誕生日だ。

私は何とも言えず、苦笑い。



「けどさ、もうこうなったら、1月のマリアの誕生日までには、意地でも結婚する」

「『意地でも』って……」

「こういうのは、ダラダラ先延ばしすることじゃねぇし」

「でも、コウ、仕事してないじゃん。お父さん、認めてくれないよ?」

「だーかーら、それはこれからするんだっつーの」


頼もしいんだか、どうなんだか。

真面目な顔で言うコウを前に、私は噴き出してしまった。



「笑うな。いいか? 俺は、本気なんだ」


胸を張るコウに、私は言う。



「私は、そんなのもう、どっちでもいいの」

「うん?」

「結婚なんて、紙切れ一枚のことにこだわるより、コウとの絆を大切にしたいっていうか。ふたりでいられれば、それ以上は求めない」

「マリア……」

「結婚しても、しなくても、私は来年も、再来年も、コウとこうして誕生日を祝い合えれば、それでいいって思ってる」
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