徒花
過去
私の左手の薬指に、片時も外すことなくはめられた、コウとの揃いの指輪。
マサくんからもらったお守りは、肌身離さず持っている。
「ねぇ、コウ。このガラクタ、捨てていい?」
「ダメだっつーの。そのオブジェは限定品だぞ。てか、今『ガラクタ』って言ったか?」
「だって、いらないじゃない」
いつまでも、うじうじしてたって仕方がない。
何をしたってもう、時計の針は戻せないのだから、私たちだって前に進まなきゃいけない。
だから、気分転換ついでに、大切なものとそうじゃないものを、選別しようと思った。
けれど、大掃除はなかなか進まない。
「マリアさぁ、俺の時計どこやった? この前つけてたやつ」
「知らないってば。どこにでも置く方が悪いんでしょ。その辺ちゃんと探してみなよ。私それどころじゃないんだから」
受け流して、私は、棚を整理する手を動かす。
大掃除といっても、実際に動いているのはほとんど私なのだから、腹が立つ。
コウは不貞腐れた顔で「ったく」とこぼしながら、クローゼットを開け、奥を探った。
「なぁ、これ何?」
「え?」
振り返ると、コウは30センチ四方の段ボール箱を手にしている。
「大事なもん? 開けていい?」
「待って!」
慌てて奪おうと手を伸ばした瞬間。
「わっ」と驚いたコウはその手を離し、段ボール箱が転げた。
床に散らかった、箱の中身。
「あー……」
アクセサリー、手紙、プリクラ。
そして、過去の写真。
コウは途端にバツが悪そうな顔をする。