徒花
コウは私の瞼の淵を、指の腹でなぞりながら、



「お前、今、テツ先輩のことどう思ってる?」

「……そんな、こと……」

「言えよ」


私は目を伏せた。

コウはそんな私をじっと見る。


私は、少しの間を置き、迷いながらも口を開いた。



「てっちゃんに会いたい……」

「うん」

「……てっちゃんに会いたいよ」


溢れた涙が大粒になって落ちる。

コウは私の頭を撫でながら、「そっか」と言った。



「私、コウのこと大好きだし、愛してるよ。でもね、ほんとはずっと、てっちゃんともう一度だけでいいから会いたいって思ってた」

「………」

「あんな最後のまま、二度と会えないなんて嫌だ。てっちゃんに伝えたいことがあるの。私は、てっちゃんに……」


それ以上は言葉が出なかった。

しゃくり上げるように泣く私を、コウは抱き締める。



「写真、戻しとこうな?」


コウは少し悲しそうな顔で言った。



ごめんなさい。

コウにこんなことを言ってしまって、ごめんなさい。


言葉にしたかったのに、できなかった。


私が謝れば、コウを余計に傷つけてしまうとわかっているから。

身勝手な私の、身勝手な想いの所為で。

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