徒花
「いやいや、まったく話が見えないんですけど」
コウは混乱したのか、首をかしげる。
でも、馬鹿らしいと思ったのか、すぐに怪訝な表情を引っ込めて立ち上がり、
「俺お前のこと考えすぎて、そのうちハゲそうだわ」
私は思わず笑ってしまう。
笑ってから、コウに抱き付いた。
「コウのこと好きだから、ハゲでもいいよ」
コウは肩をすくめて小さく笑い、「全然フォローになってねぇよ」と、呆れた口調で呟いた。
「ありがとね、コウ」
すべては私のためにしてくれたこと。
それがどれほどの想いだったのかと想像するだけで、胸が痛む。
「てっちゃんに会えてよかった。沙希もだけど。何か、自分の中で、区切りになった。あのまま、知らないまま、会えずに終わってたら、ずっと変にもやもやしたものが残ったままだったと思うから」
「………」
「コウのおかげ。隠さないでくれて、最後にてっちゃんと会わせてくれて、ありがとう」
コウは胸の中にいる私の頭を撫でる。
「もう二度としねぇけどな」
そんな悪態をつきながら。
私が顔を上げると、コウは困ったように笑う。
やっぱりあったかい、胸の中。
「帰ろうぜ」
「うん」
ふたりで車に乗り込んだ。
絶対に忘れない、けれどもう過去の人。
思い出も、記憶も、さよならの言葉と共に、ここに置いて帰ろう。
コウは混乱したのか、首をかしげる。
でも、馬鹿らしいと思ったのか、すぐに怪訝な表情を引っ込めて立ち上がり、
「俺お前のこと考えすぎて、そのうちハゲそうだわ」
私は思わず笑ってしまう。
笑ってから、コウに抱き付いた。
「コウのこと好きだから、ハゲでもいいよ」
コウは肩をすくめて小さく笑い、「全然フォローになってねぇよ」と、呆れた口調で呟いた。
「ありがとね、コウ」
すべては私のためにしてくれたこと。
それがどれほどの想いだったのかと想像するだけで、胸が痛む。
「てっちゃんに会えてよかった。沙希もだけど。何か、自分の中で、区切りになった。あのまま、知らないまま、会えずに終わってたら、ずっと変にもやもやしたものが残ったままだったと思うから」
「………」
「コウのおかげ。隠さないでくれて、最後にてっちゃんと会わせてくれて、ありがとう」
コウは胸の中にいる私の頭を撫でる。
「もう二度としねぇけどな」
そんな悪態をつきながら。
私が顔を上げると、コウは困ったように笑う。
やっぱりあったかい、胸の中。
「帰ろうぜ」
「うん」
ふたりで車に乗り込んだ。
絶対に忘れない、けれどもう過去の人。
思い出も、記憶も、さよならの言葉と共に、ここに置いて帰ろう。